「FIFA 21」は、引き続きスポーツゲームの悲惨なトレンドを継続させています。核となるピッチ上でのゲームプレイの漸進的な改善に取り組んでいるものの、その大半は面白みにかけるものであり、現時点で大きな改善はあまり見られません。

近年のシリーズ同様にアクションはスムーズですが、キャリアモードには十分な投資が行われず、主要モードにも小さな変更が加えられただけで、様々なチャンスが無為に失われているように感じられます。

些細な変化は表面的には見えにくいものです。新たなセットプレイのシステムやタイミングフィニッシュといった目玉となるイノベーションはありません。しかし、実際にプレイすればするほど小さな変更が多く加えられていることがわかってきますし、その大半はポジティブなものです。これらの変更が多額の予算につながっているのです。

どうやらEAは今年、最適な動きのテンポを見つけたようです。試合はスムーズに展開し、現実と比較しても受け入れられるようなスピードで選手が動くようになったことが何よりも重要な点と言えます。

本作では全てのアタッカーがディフェンスをかわせるということがなくなり、こうしたプレイが可能なのはキリアン・ムバッペのような一部の選手のみとなっています。これはまさに本来あるべき姿です。近年のFIFAに対する私の大きな批判点の1つはその一貫性のないテンポの部分にあったので、今年はそこがきっちり改善されたのが嬉しいところです。

簡単に相手を抜き去ることができなくなった以上、パスを極めることが不可欠です。ありがたいことに、パスをつないでゴールに迫ることがかつてないほどやりやすくなっています。しっかり三角形を作って相手のボックスに迫り、得点のチャンスを伺うという流れは、シンプルすぎるとさえ言えるほどです。キラーパスは、あまりに頻繁に通ってしまい、それを成功させるための能力やビジョンはほとんどいりません。また、チャンスメイクがあまりにシンプルすぎるように感じられることもあります。

それに加え、AIのポジション取りの良さと右フリックによる移動指示が可能になったことで、90分通して得点チャンスが過剰に生まれるゲーム展開になっています。

また、お粗末なゴールキーパーの仕様により、たいていのチャンスが得点につながります。クロスやコーナキックをキーパーがキャッチすることはほとんどなく、100回中99回はパンチングなどのプレイになります。トップクラスのゴールキーパーたちでさえも、ボールが自分たちのエリアに向かってくると、まるで自分の手が溶けてなくなってしまう悪夢に熱でうなされているような動きをします。